今も焚火の炎は燃えている。
塩胸の胸中には、あの日の幼い自分が焚火をしていたことが蘇っていた。
どうしてあの日は、夏だったのに寒かったのだろう。
枯れた枝木は静かに燃えながら、こちらを見つめているような気がしていたものだ。
「静子、まだ来てないのか?」
「来てないみたいだね」
やまだゆきはカップラーメンを食べている。
狭い庭に麺を啜る音が響く。
野良猫がすっと目の前を通る。通りすぎる時、こちらをちらりと見つめて口を開けていた。
「静子来ないみたいだね」
「そうだな」
空に雲が退屈そうに漂っていて、あの日の燃えている枝木のようにこちらを見つめているような気がした。