玉崎は今月、彼女に勧められて相撲を観に行った。
そこで、髪の長い、まあ普通くらいの美人と出会い、相撲を観ながら話をしたのだが、どうやらこの普通美人は大酒飲みらしい。
「玉崎さんは相撲に興味あるんですか?」
「いやないんだ。彼女に勧められたんだ」
この普通美人の名は、玉川というらしい。
「私と玉崎さん、玉玉ですね」
と玉川は言った。少し上目遣いだ。
そして、相撲の帰り、二人は居酒屋に寄り、その後、威勢の良いことをホテルでして別れた。連絡先は聞かなかったし、また会う約束もしなかった。
「相撲どうだった?」
「おもしろかったよ、お相撲さんて真近で観るとでかいんだね」
何気ない会話だ。この世界の静けさに私と彼女の声だけが部屋に響いていて、それは虚しい陽気さを漂わせている。
「女の子とかと遊んでないよね?」
彼女の質問には答えず、
「だからさ、おれはそういう束縛苦手だって行ってんじゃん、結婚してるわけじゃないんだ」
彼女は寂しいような、まあそんなもんなのかなみたいな顔をしながら、コーヒーを飲んでいた。
テレビでは女性アナウンサーが真剣な顔をしながらニュースを読み上げていた。